Key Facts 数字で見る世界のエイズの流行

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)は今年7月、米国の首都ワシントンDCで開かれた第19回国際エイズ会議に先立ち、世界のエイズの流行の現状と展望をまとめた最新報告書『Together we will end AIDS』を発表しました。報告書の骨格となる推計データを集めた「Key Facts」に関してはエイズ&ソサエティ研究会議のHATプロジェクトのブログに日本語仮訳が掲載されています。たとえば・・・
 http://asajp.at.webry.info/201208/article_1.html

 いくつか紹介しておきましょう。

・世界のHIV陽性者数は2011年現在3420万人〔3180万〜3590万人〕
−抗レトロウイルス治療の普及でHIV陽性者が長く生きられるようになり過去最高

・2011年には年間250万人〔220万〜280万人〕が新たにHIVに感染
  −2001年当時の20%減

・2011年には年間約170万人〔160万〜190万人〕がエイズ関連の原因で死亡
  −最も多かった2005年より24%減

・2011年の段階で抗レトロウイルス治療を受けている人は800万人以上
  −2010年からの1年で20%増加

・2011年に新たにHIVに感染した子供約33万人
  −2009年より24%減

・成人(15歳以上)の新規HIV感染例の40%は15〜24歳の若者

・世界全体で見ると、若い女性(15〜24歳)の感染率は、同年代の男性の感染率の2倍

・2011年の世界のHIV対策への投資は168億ドル(必要額より70億ドル不足)

・46カ国・地域がHIV陽性者の入国、滞在を規制している。

 年間新規HIV感染者数は以前より減っているのに世界全体のHIV陽性者数が3420万人で過去最高なのは一見、奇異に感じますが、《抗レトロウイルス治療の普及でHIV陽性者が長く生きられるようになり》と説明されています。エイズで亡くなる人は年間170万人で最も多かった2005年より24%減。年間の死者数よりも新規感染者数の方が多いので、治療の普及という対策の成果がHIV陽性者数の増加という結果に反映するかたちになっています。

 予防対策が一段と進み、エイズによる死者は治療の進歩で大きく減ったけれど、それ以上に新規感染が減っていますというところまで持ち込めれば、文字通り「エイズの流行の流れ」が反転し、流行の「終わりの始まり」が本当に始まることになります。いまこそ、そのために世界が力を合わせるときだというのが報告書のタイトル『Together we will end AIDS』に込められたメッセージでしょうね。